寒くない家のはなし ③

先日はバレンタインデーでしたね。
私なんぞのためにわざわざご用意してくださいました方々、どうもありがとうございました。また、事務所に届けていただいた方には不在にしていたため大変お手数をおかけしたかと思います。お詫び申し上げます。


「女性が好きな男性にチョコレートを渡し告白・・・」なんていう、若い頃は誰もが一度はソワソワ・ドキドキとそんな一日を過ごされたのではないでしょうか。
実はこのバレンタインデーに渡す「チョコレート」世界ではとても珍しいようで、また「女性から男性へ」というのも日本オリジナルに改変された文化のようです。とはいえ、大切な人に自分の思いを伝えるという一番肝心な部分はまだ世界共通のままだということで安心しました。
私も、皆さまの大切な思いがちゃんと伝わるよう氷の十字架に祈りました。ついでに「寒くない家」の更なる発展も、それからとりあえず世界平和、旅行安全、家内安全、無病息災、開運招福、商売繁盛・・・(微妙に違うけどまあいいや)

 

寒くない家といえば、皆さん「氷のホテル」という建物をご存知ですか?


本物の氷だけで造られていて実際に宿泊することもできるホテルです。
氷なのにあまり寒さを感じないという、私が今まで述べてきた寒い家に関する雑談を全て無にするようなとても信じがたい噂を耳にしましたので、真相をこの目と体でしっかりと確かめてきました。(あくまで仕事感)
第一印象は「とても綺麗」でした。正直、数分間は本当に寒さを忘れるくらい。いや寒さこそがその場に静寂をつくり、厳かな雰囲気に色とりどりの光がアンバランスに調和してとても幻想的な温かさで包んでくれるようなそんな感覚に陥りました。ですが「数分間」です。感覚が慣れてくると同時に体感温度は室温-12℃へと戻され、氷でできたダイニングに座っての食事はまさにバツゲーム、氷のベッドにいたってはもう狂気の沙汰としか言いようがない。そんなとてもユニークなお部屋でした。
フロント横に併設された氷のBARでは、まず15cm四方の氷の塊から自分で彫りだしてグラスを作成し、そこにお酒を注いでもらうというとんでもないボッタクリシステム?が用意されていました。ただ、この巨大冷凍庫(氷のホテル)から無事生還するためには、何としてもそのアルコールによる体内発熱が不可欠だという事を知り、私は目の前の氷の塊とノミを震える手に持ち、全てが氷で築造された作業コーナーへと向かうしかなかったのです。

「氷の塊」といういわゆる無のものから「グラス」という有のもの(意味を持つもの)を導きだす過程のなかで、真っ白の紙の上から始まる設計・建築というものにとにかく憧れ魅了されていた初心の頃の自分に出会えた気がして、私はただひたすら自分が思い描いている形になるまで無心で彫り続けました。完成し形を手に入れ新たな意味を持った氷、そしてそこに注がれたウイスキー。口当たりはまるで皮膚を剥ぎ取るかのような冷たさでしたけど、その味はとても深く格別でした。
-12℃の世界というのに若干の汗もかき、心も体もHOTになった私は「寒くない家とは一体何だろう?」と改めて再確認させられた気がします。

 

Nähdään myöhemmin・・・